EUにおける化粧品の表示(クレーム)

フォローアップ(追記)

2019年2月17日

EUにおけるマーケティング・クレームの正当化のための「共通基準(コモンクライテリア)」を解釈する、新ガイドラインが2019年7月2日より実施されます。この日より、各国当局や裁判所は本ガイドラインを参考することになります。この新しいルールは、「パラベン・フリー」などの(非常に一般的な)クレームが半年後には禁止されるという深刻な結果をもたらします。化粧品ブランドは、自社の製品ラベルやその他マーケティング・コミュニケーションが新しい要求事項に準拠しているか、もしくは、少なくとも期限までには適合させることを確認する必要があります。

以前のガイドラインと比較して主な変更点は、「~フリー(free from)」と「低アレルギー性(hypoallergenic)」の表現です。これらの新要求事項に未だ詳しくない化粧品ブランド様は、早急に弊社発行の[Information Letter N°49]をご覧ください。

この新ガイドラインの施行に伴い、2つの大きな影響があります。

  • この[Information Letter]の発行日以降、弊社の規制エキスパートは、本ガイドラインを厳密に適用することが求められます。つまり、改定されたこの規制に準拠していない製品ラベルは、有効性を持たないということになります。
  • 2019年7月2日以降、BIORIUSは、この新ガイドラインに関するコンプライアンス不履行に起因するいかなる法的結果に対しても責任を負いません。実際、この新規則については、これまでにインフォメーションレターや、アカウント・マネージャー、弊社エクスパートとの日常的なコミュニケーションを通じて詳細に説明されてきています。よって、化粧品ブランドは、現在の慣行を十分に理解しているとみなされます。

不明点や質問などございましたら、お気軽にBIORIUSにお問い合わせください。また、必要に応じて、お客様の製品の中で最もセンシティブな表示について再評価を実施し、実践的な提案をさせていただきます。

「共通基準(コモンクライテリア)」法制を解釈する、新ガイドライン

2017年11月9日

EU化粧品規則(EC No 1223/2009, Article 20)で求められているように、化粧品に記載された表示(クレーム)の許容性は、共通基準(コモンクライテリア)に準拠しているかどうかで判断されます。EU委員会とEU加盟国によって制定されたこの6つの共通基準(すなわち、①法令遵守、②真実性、③証拠による裏付け、④誠実さ、⑤公正さ、⑥情報に基づいた意思決定)は、EU規則 No 655/2013にて報告されています。

EU委員会とEU加盟国は、共通基準(コモンクライテリア)の適用に関するガイドラインの改訂版を発表しました。この新版には、「~フリー(free from)」表示に関する附属書(Annex III)と「低アレルギー性(hypoallergenic)」表示に関する附属書(Annex IV)の2つが追加されています。これらの新しい付属書は、化粧品表示(クレーム)の管理に以下のような変更をもたらします。

Annex III: 「~フリー(free from)」の表示(クレーム)

「~フリー」表示の種類Status理由
「~フリー」+ EU化粧品規則で禁止されている成分x例:「Heavy metal free(重金属不使用)」
製品に特定の恩恵・便益があるという考えを伝えるような表示は、その恩恵・便益が単に最低限の法的要件を満たしているだけの場合には、認められない。
「~フリー」+製品に含まれる成分または成分カテゴリーx例:「Free from formaldehyde(ホルムアルデヒド不使用)」(製品にホルムアルデヒド放散剤が含まれている場合
製品に特定成分が含まれないと記載されている場合、その成分は意図的に含まれてはならない。
「~フリー」+製品に含まれることが想定されていない成分x例:「Preservative free(防腐剤不使用)」(製品に多量のアルコールを含むファイン・フレグランス、または入浴剤である場合、防腐剤を含むことは想定されない)
クレームは、類似の製品が同じ特性を持つ場合、当該製品が特定の特性を持つような表示をしてははならない。
「アレルギー物質/感作性物質・フリー」xアレルギー反応のリスクが完全にないことは保証できず、よって、製品はそのような印象を与えてはならない。
「~フリー」という表現や、同様の意味を持つ表現は、該当成分が含まれていないことによって、製品特性が保証されているかのように意図されているが、実際にそれが保証されない場合には認められない。
「~フリー」 + 成分カテゴリー(例:香料、防腐剤、着色料)v/x例:「Preservative free(防腐剤不使用)」は、公式の防腐剤リスト(Annex V)には含まれていない抗菌作用のある成分を、製品が含んでいる場合は正しくない。例:「Fragrance free(無香料)」は、製品中の他の可能な機能に関わらず、香料としての機能を持つ成分を製品に含む場合は正しくない。
この表示は、副次的な機能としてこの成分群の特性を持つ成分を製品が含む場合を除いて、受け入れられる。
「~フリー」 + 合法的に使用されている成分、または成分群x例:「Parabens free(パラベン・フリー)」
化粧品の表示は客観的でなければならず、競合他社を否定したり、合法的に使用されている成分を否定してはならない。
特定のターゲット・グループまたはエンドユーザー・グループに対して、情報に基づく選択を可能にする「~フリー」の表示v例:家庭用製品としてのマウスウォッシュに「Free from alcohol(アルコール不使用)」と記載。
例:ビーガン製品の「動物由来成分を含まない」など。

表示は製品にとって不可欠であり、平均的なエンドユーザーが十分な情報を得た上で選択できるような情報を含まなければならない。

Annex IV: 「低アレルギー性(hypoallergenic)」の表示(クレーム)

「低アレルギー性(hypoallergenic)」という表現は、化粧品が該当するアレルギー性の可能性を最小限に抑えるように設計されている場合にのみ使用することができます。この主張を裏付ける証拠は、科学的に堅牢で、統計的に信頼できるデータ(市販後調査データ等)を用いて、製品のアレルゲン性が極めて低いことを検証・確認することで得られなければなりません。

「低アレルギー性(hypoallergenic」を謳う製品は、既知のアレルゲンまたはアレルゲンの前駆体を含みません。

本ガイドラインでは、SCCS Memorandum SCCS/1567/15を参照することで、Human Repeated Insult Patch Tests(HRIPT)のような健康なヒトボランティアを対象とした試験について、有用な説明を行っています。本ガイドラインは、当初のドラフトよりも厳格ではなく、HRIPTによる成分の危険性評価は非倫理的であり、厳格に禁止されるべきであることを明確にしています。ただし、化粧品のヒトでの耐性試験は許容されています。理想を言えば、化粧品(完成品)で行われるHRIPTよりも、繰り返し行われるオープンアプリケーションテスト(ROAT)の使用が望ましいでしょう。

なお、これらガイドラインの法的根拠は不明確なこともあり、本稿については、該当テーマの専門家である弁護士(Ms. Sylvie Gallage, Hogan Lovells LLP, パリ)に法的レビューを依頼しました。

  • 一つの見方としては、この文書は法的根拠を持たない作業文書であり、したがって法的拘束力があるとは見なされないことが確認されました。
  • 他方で、このガイドラインは、化粧品がEU規則No.655/2013に準拠しているかどうかをケースバイケースで判断するために、各国当局や裁判所で使用されます。

したがって、化粧品ブランド様においては、(リスク軽減のためにも)このガイドラインを遵守することを強く推奨いたします。本ガイドラインのAnnex III、およびAnnex IVに記載されている要件は、2019年7月から適用されます。法的拘束力のない文書に期限を設けることは困難ですが、各国当局や裁判所はこの時点から本ガイドラインを参照し始めると考えられます。

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