欧州でもこの夏記録的な暑さを経験しましたが、気候変動は世界的な懸念事項となっています。この問題に対処するため、欧州及びEU各加盟国の政策は進化し、より厳しい方向へと向かっています。その一例として、環境ラベル情報やリサイクル義務に関する新しい要件が導入されています。
EUの法的枠組みは幅広く、廃棄物に関する指令、包装・梱包廃棄物指令(94/62/EC)、決定(97/129/EC)、各国独自の国内法などが含まれます。
EUの状況:1つの指令、各国で異なる実施方法
1994年、EUは包装と包装廃棄物に関する指令を施行しました。
その主な理由は、環境問題の原因となる包装廃棄物の増加への対応と、各国市場の機能を促進するためでした(EU加盟国ごとに異なる規則を採用していたため)。
それ以来、EUは包装に関する法律を何度か改正してきました。これらの改正には、プラスチック製キャリーバッグに対する措置、EU加盟国に対する廃棄物防止と再利用の追加義務、拡大生産者責任制度が含まれます。
EPR(拡張生産者責任)とは
拡大生産者責任(EPR)は、1980年代初頭に一部の加盟国で導入された環境政策手法で、製品に関する生産者(メーカーや輸入業者)の責任を製品ライフサイクルの「消費後段階」まで拡大するものです。
これ以来、EPRはEU域内(および世界各国)で継続的に広まっている概念です。これらの規則は横断的であり、あらゆる種類の包装(電子機器、食品、化粧品など)に影響を与えます。実際には、EPRは、生産者が使用済み製品の回収や引き取り、最終的なリサイクルのための分別や処理に責任を持つことを意味します。このような責任は、財政的・組織的なものの両方を含みます。EPRは、欧州廃棄物ヒエラルキーの実施を支援する主要な手段であり、したがって、優先順位としては、防止、再利用、リサイクルの増加のために考慮されるべきものです。
EPRは、他の主要な経済的手段とともに、製品のバリューチェーンに関わる全ての関係者(製品メーカー、小売業者、消費者・市民、地方自治体、公共・民間廃棄物処理業者、リサイクル業者、社会経済関係者)の行動変化を促すことが可能です。
2024年: EU加盟国の期限
指令94/62/ECの最新の改正には、以下のような更新措置が含まれています。
- 包装廃棄物の発生防止
- (最終処分ではなく)包装廃棄物の再利用、リサイクル、その他の形態での回収を促進する
2024年末までに、EU諸国はすべての包装材について生産者責任制度(EPR政策)を確立することを保証しなければならないという規則が定められています。しかし、これはEU指令であるため、EU加盟各国はそれぞれ異なる方法で国内法に置換えています。したがって、この指令の適用は、ほとんど義務がないものから非常に厳しい要求まで、国ごとに大きく異なる可能性があります。
現在までのところ、フランス、ドイツ、イタリアだけが、販売者へのEPR準拠の確認をマーケットプレイス(=市場)に義務付けています。ただし、コンプライアンス違反に対する罰則は、近年ますます厳しくなっています。
以下、フランスとドイツの事例を紹介します。
ドイツ:「Verpackungsgesetz」法
ここでは、「Verpackungsgesetz」法の最近の改正/更新の概要について説明します。
- 2022年7月1日より、すべてのタイプのパッケージがドイツ市場向けに登録される必要があります。つまり、初めてドイツ市場に製品を投入するすべての生産者は「Lucid Packaging」のウェブサイト【Zentrale Stelle Verpackungsregister (Central Agency Packaging Register)】のオンラインプラットフォームに登録をしなければなりません。生産者は、パッケージの種類とブランド名について詳細を提供する必要があり、また、すでに登録済みの生産者については、既存の登録に詳細を追加することが求められます。
- 電子マーケットプレイスは、商品を詰めた包装をドイツ市場に出すビジネスパートナーが「LUCID Packaging Register」に登録されているかどうかを確認することが義務付けられています。【Zentrale Stelle Verpackungsregister (Central Agency Packaging Register)】は、このためにデジタルレジスタの抜粋を提供しています。
フランス: 「Agec」法
複数の措置のうち、化粧品のラベリングに影響を与える主な措置は以下の通りです。
- 2022年1月1日より、Info-Triの分別指示書の表示が義務付けられます(パッケージがリサイクル可能かどうかに関わらず)。家庭用包装材には、Info-Tri、すなわち、トリマンロゴと消費者に正しい包装の分別方法を知らせる分別指示書の表示が義務づけられます。Info-Triは現在、消費者が容易に認識できる標準的なマークとなっています。Info-Triは包装のリサイクル性とは関係なく、環境団体CITEOが作成したガイダンスに記載されている特定のラベリングルールに従わなければなりません。
💡移行期限について:
生産者は2022年9月9日までに、すべての家庭用包装材にラベルを貼付しなければならなりません。2022年9月9日以前に製造され、2023年3月9日以前に販売者/下請け業者に販売されたパッケージは、2023年3月9日以降もInfo-Triなしで製品を販売できる可能性があります(充填されていてもいなくても)。なお、不遵守に対する罰則金額は、人(Natural person)で3,000ユーロ、法人(Leagal person)では15,000ユーロとなっています。
- 2022年1月1日より、分別ルールに関して「消費者を混乱させる可能性のある標識」を撤去することが決定されました。AGEC法第62条では、分別ルールや製品の廃棄量に関して混乱を招くような表示や標識には、金銭的な罰則を課すべきと定めています。
分別ルールに混乱をもたらす標識やマークに関する省令(Arrêté du 30 Novembre 2020)は2020年12月24日に発表され、以下の例外を除き、丸に2つ以上のコイル状の矢印を表す標識は混乱を招くと規定されました。
- トリマンロゴ(The Triman logo)
- 製品ブランドや販売会社に関連するロゴマーク
- 製品がリサイクル可能であることを消費者に知らせる、または分別方法を示す加盟国の規制対象標識
したがって、グリーンドット(Green Dot)はこの国内規定の影響を受けることになります。ただし、金銭的ペナルティは停止されており、最終的な決定は、2022年中に下されるといわれています。
BIORIUSでは、以下のサービスを提供します。
製造者の拡大生産者責任(EPR)と、特定の市場(例えばフランスやドイツなど)でパッケージを製造または輸入する場合に適用される新しい表示義務に関する情報を提供する新サービスを開始します。
対象国として、EU加盟国、英国、スイス、ノルウェーの中から、お客様のご都合に合わせてお選びいただけます。また、規制により特定のラベル表示や新たな要件が設定されている国も紹介いたします。
リサイクル義務についての詳しい情報をお求めの場合は、弊社担当者(日本語可)までお気軽にお問い合わせください。